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GT-Rマガジン 067号 「NISMO F-SPORT GT 2.8Lの本領を味わう」

誌名:GT-R Magazine 067号 2006/Mar.発売:2006年2月1日
出版社:交通タイムス社
ページ:36ページ〜43ページ
NISMO F-SPORT GT
2.8Lの本領を味わう
NISMOの新しいコンセプトパッケージ「F-SPORT GT」の詳細が紹介されました。
NISMO F-SPORT GT − 2.8Lの本領を味わう
前号において初公開したニスモの新たな切り札「F-SPORT GT」。
32/33/34と第二世代GT-Rを産み、走りをはぐくんできた渡邉衡三を納得させるという命題。
そこにはスペックだけでは語りつくせない「味わい」と「本質」が求められる。
いよいよ渡邉が新機軸と対峙する。果たして卒業試験を華麗にクリアすることはできるか。
'06ニスモの新たな切り札公開 〜 渡邉衡三の選択 −後編−
GT-Rの輝きと純度を保つために
2.8Lのフレキシブルな特性 渡邉自らその本質を噛み締める
「開発に携わったクルマは自分でも購入し愛車とする」日産自動車在籍当時からの渡邉衡三の信条である。現在も第二世代Rはすべて所有し、鮮やかなベイサイドブルーのBNR34Vスペックを主に普段のパートナーとしている。「32より33、33よりも34と代を重ねるごとにクルマは良くなったと自負できます。とくに加藤博義と一緒にテストした第二世代最後のGT-R、34Vスペックの乗り味には深い思い入れがあります。GT-Rが進化していく過程でエンジンを2.8Lにする構想も全くなかったわけではありません。ただし排気量を200cc上げるだけといった簡単なものではない。メーカーでやるとなると開発コストや耐久試験の問題など、現実的には提案できる状況ではありませんでした。」
今だから明かせる−。
渡邉は当時を振り返り語った。
「そのぶん、各部のファインチューンに力を入れ進化させたつもりです。32、33と2.6Lを継承してきたこともありますし、ユーザーの方々の負担やスーパー耐久のこと、ひいてはチューナーの方々のことを考えていたのも事実です。」
前号でも報じたとおり、ニスモが温め続けてきた「F-SPORT GT」は同社がこれまでに培ってきたノウハウを傾注した2.8Lメニュー。ターボチャージャーや排気系パーツは純正を使用し、日常での扱いやすさを大事にした新しい提案といえるだろう。渡邉曰く、「チューンというよりアップデートといった方が適切かもしれません。34GT-Rの開発をスタートしたのは今から10年近くも前です。その間の技術の向上や業界全体の動向を考えると、当時のGT-Rの純度や他社との絶対的な格差を保つためには化粧直しもありでしょう。」
”産みの親”渡邉衡三が初めて「F-SPORT GT」を纏ったBNR34のステアリングを握る。第一印象を包み隠さず赤裸々に語ってもらった。
「一番感じるのは低速トルクの厚みです。スタンダードの2.6Lとくらべると吹き上がりも良くなっています。
各パーツが入念に組まれているせいもあるでしょう。低速トルクがあるからといって上がモノ足りないかというとそんなこともない。全体的に底上げされているといった印象です。ただ、相対的に言うと2.6Lの過給域のフィーリングにたいして、2.8Lは少し盛り上がり感が少ないかなと感じます。2.6Lのほうがよりターボらしいとも言い換えられますが。」パワー感は2.6Lの方があると?
「いえ、速さでは確実に2.8Lに軍配が上がります。確実に速いけれどもフラットな特性なんです。運転が楽になりますしリラックスして乗るにはこちらの方が適している。昔、開発の頃にやっていたテスト評価方法のひとつとして、『アイドリング回転から全開加速を試みた時のフィーリングはどうか?』というものがあったのですが、低速域からトルクが”ドン”と出て過給に入っていく。高いギヤほどトルクの厚みが実感できます。
特性に関しては文句なしです。まさしくGT-Rのアップデートと呼ぶに相応しい。これならば自分の34に与えても良いと思えます。日常での使いやすさを求めている方は大変満足できる仕様といえるでしょう。お客様の好みに仕上げていくことで車にもより愛着が沸く。大事に長く乗っていただくことは、私にとって非常にありがたいことなのです。」自宅から都心の一般道、高速と自らステアリングを握った渡邉は、クルマと対話しながら2.8Lの鼓動を確かめた。
「自分の34に与えても良い」という言葉は渡邉衡三が2.8Lに与えた合格証書といっても差し支えあるまい。

■都内某所の閑静なマンションに居を構える渡邉衡三。パレット式の駐車場から2.8Lの34Rが姿を現す。今回の試乗は日常ユースを想定し自宅を起点とした。
■日産本社にほど近い銀座周辺を流す。「クラッチミートした瞬間からトルクの厚みを実感する。」ストップアンドゴーが多い街中でこそ排気量UPの効果が生きる。

■排気系を純正とすることも渡邉が拘った点。「実用上、ご近所の迷惑も考えなくてはなりません。私のようにマフラーの音量を気にされる方も多いはずです。」■100点満点で何点の出来ですか?の問いに「そうですね、95点は与えられます。私の34も大森ファクトリーに預けないと(笑)」 愛車が2.8L化される日も近い!?
GTエンジンパーツを惜しみなく投入
Rを延命させるための新手段 耐久性の向上も特筆すべき点
ニスモが切り開くRB26チューンの新たなる指標。サーキットに特化したZ2にたいし、日常ユースでの使いやすさにフォーカスして企画されたのが「F-SPORT GT」である。
BNR34 STDタービンと純正の排気系という一見ライトな組み合わせながら、腰下にはN1ピストン/GTエンジンブロック/GTクランクシャフト/GTコンロッド(スペック1)という贅沢なパーツを投入。パフォーマンス面ではもちろん、高い強度と信頼性にも重きを置いている。スペックも371.4ps/48.16kg-mとノーマルに比較して大幅に向上。
「プラス200ccということはスタンダードにたいして排気量的には1割弱の増加ですが、トルクは48kg-mですから2割もアップしていることになります。出力も380ps近く出ている。これはアストンマーチンのV8バンテージに匹敵する数値ですよ。」 渡邉の試乗後のコメントからもF-SPORT GTの力強さは容易に想像がつくというものだ。
また、昨年12月4日に富士で開催されたニスモフェスティバルの会場において、渡邉衡三と日産自動車プロジェクト実験部の加藤博義がトークショーを行ったのだが、ニスモの計らいでフェスティバル前日、現役テストパイロットである加藤博義にも試乗してもらう機会を得た。
「2000〜4000rpmがすごくトルクフル。運転がとても楽になると感じました。Mスペックを企画したときにこういうエンジンがあったら凄くわかりやすくアピールできたかもしれません。」とコメントを残してくれた。
前号でF-SPORT GTの存在を明らかにして以来、大森ファクトリーには早速問い合わせがあり、すでに数機分の受注を受けているという。BNR32の実験主担、そしてBCNR33/BNR34では商品主管を務めた渡邉衡三が認めた大人の味付けは、オリジナルを崩したくないというオーナー諸氏にも受け入れられることだろう。
なお今回取材で使用した車両であるが、ニスモ・カーズファクトリーではF-SPORT GTをはじめサスペンションやタイヤ/ホイールを全て装着したコンプリート状態で特別に限定販売している。ベースは'99年式のVスペック(走行2万2000km)。車両は税込みで732万9000円となる。渡邉衡三と加藤博義がドライブした貴重な一台。興味のある方はお早めに! (文中敬称略)

■F-SPORT GTを搭載する際には、排気量の変更に伴い車検証の記載変更が必要になる。大森ファクトリーではエンジンの製作・換装に加え改造申請の手続きも行ってくれる。フォローは万全だ。■ブロック/クランク/コンロッド/ガスケットにGTエンジンパーツを採用。走行6万km以内のBNR34限定メニューとなる(その他は要相談)。作業工賃込みで168万円(改造申請等は別途)
[F-SPORT GTのほかにもメニューを設定]

ニスモが現在展開しているRB26DETT用コンプリートメニュー「SR(スポーツリセッティング)」「S1」「R1」のほかに、大森ファクトリーではチューニングメニューとし「F-SPORT」と34Nur専用の「NUR-SPORT」をラインアップしている。前者はS1の発展形とも言える仕様で、N1ブロック/N1ピストン/チタンコーティングトップリング採用加え圧縮比アップを施したもの(工賃込みで156万2222円)。
NUR-SPORTは専用カム/ヘッドガスケット/コレクターキット/ECMなどによりN1エンジンの弱点とされる低・中速トルクUPを実現させるメニュー(工賃込みで106万3825円)
スポリセを除きニスモが手がけるコンプリートエンジンはすべて大森ファクトリーの専任メカニックにより手組みされ、最終的にはベンチ上でラッピング(慣らし)も施される。[車高調整式サスのメリットに注目]
今回F-SPORT GT搭載にあたり操安性の向上も図った。装着したのはニスモの「S-tune HA」。ご存知の通り従来のS-tuneサスペンションに車高調整機能を追加したモデルだが、車高を下げるのみではなく場合によっては上げることもできるというメリットに注目したい。
とくに、前後にディフューザーを備える34Vスペックの場合、駐車場の輪留めに接触してしまうなど車高ダウンに抵抗を感じる方も多いはず。だが、調整機能の付いたHAならばノーマルに近い車高に設定することも可能なのだ。
■出荷時の車高はノーマル比でF=30mm/R=25mmのダウンとなっているが、性能を損なわない範囲で±15mmの車高調整が可能。減衰力5段調整式で24万1500円となっている。
■車高変化に伴いアライメント調整は必須。大森ファクトリーでは装着作業のほかセッティングにも応じてくれる。実際に基準値よりも車高を上げたいというオーダーもあるという。
■車高/アライメントに加えコーナーウェイト調整にも応じてくれる。今回はタイヤにBSのプレイズ(265/35-18)を使用。渡邉は「Mスペックに近い乗り味」と評した。